こんにちは、Hiro(@Hiro_kaigostyle)です。
こちらのブログでは、介護職の転職に関する疑問に答えています。
ユニットケアに憧れて、ユニット型の特養に就職したけどちっともゆったりした時間が取れないんだよね。これでその人らしい暮らしなんて送れるのかしら…
今回はこんな介護職員さんの悩みに答えていきますね。
こちらの記事では、その理由を詳しく解説しているので興味のある方は是非ご覧ください。
ユニットケアが崩壊に向かっている理由
ユニットケアが崩壊に向かっている理由はこちらの4点!
それでは解説します。
ユニット型特養の人員配置基準に問題がある
特養の人員配置基準では常勤換算で3:1以上の介護職員または看護職員を配置することになっています。
要するに、利用者さん3名に対して1名の介護職員又は看護職員ってことです。
ただ、ユニット型特養の場合は、これに加えて以下3点の基準も満たす必要があるのです。
- 【昼間】1ユニット毎に常勤1名以上の介護職員または看護職員を配置すること。
- 【夜間】2ユニット毎に1名以上の介護職員または看護職員を配置すること。
- ユニット毎に常勤のユニットリーダーを配置すること。
つまり、定員60名のユニット型特養の場合ですと(60÷3=20人)を各ユニットに振り分けてシフトを組むことになりますので、20÷6で1ユニット3.3人の人員配置という事になります。
これは、1日3.3人の職員で利用者さん10人をみるのではなく、3.3人の職員でシフトを作成するという意味です。
勘違いしやすいので気をつけて下さいね。
実際に1ユニット3.3人の人員で勤務表を作るとこうなります。
赤枠で囲んだ日は早出がいない日となり、休憩を取るとユニット内に介護職員がいない状況になってしまいます。さらに、有給休暇の取得や会議等への出席などもあるため実質シフトが組めません。
つまり、3:1以上という介護職員の人員配置基準はそもそも妥当性に欠けているという訳です。
したがって、ユニット型特養では実際のところ、これ以上の人員を配置している施設が多いのです。
私が勤める施設もその1つでして、1ユニット5.4人の職員配置を行っています。
常勤換算では1.8:1で、こちらがそのシフトです。(夜勤:8時間勤務)
常勤4名、非常勤2名が各ユニットに配置されているため、有給休暇や日中の委員会活動へ出席してもユニットが空になるという状況は起こりません。
また、余剰人員を抱えているため日中最大4名となる時間帯も数日あります。もちろん余剰人員ですので有給取得に当てることも可能です。
ところが実際は、人手不足でシフトも組めず休日返上・サービス残業で悲鳴を上げている介護施設が多いのです。
そこで今話題の「4:1への人員配置基準の緩和」問題!
介護職員の人手不足で仕事がきつい
ある特養は、1ユニット10名の利用者の介護を日中早出と遅出の2名で回しているという話をしていました。もちろん2名と言っても休憩時間を除けば両者が重なる時間は僅かしかありません。
すると別の施設の方も「うちもだよ!」と言って「採用活動をしても人は来ないし辞めていく」と嘆いていました。
つまり、このような勤務実体であると推測ができます。ちなみに夜勤は2ユニットに1名の配置です。
実際にこの勤務でその人らしい生活を支援していけるのかを考えてみましょう。
例えば、1ユニット10名の方の入浴介助を週2回の頻度で行うには、平均して毎日3名の方に入浴して頂かなければならない計算になります。
※週2回以上の入浴は法令で定められているから守らなければなりません。
という事は、「午前2名・午後1名」ないし「午前1名・午後2名」の方に入浴していただく必要があります。
人手不足で早出と遅出の2名だけしかいない場合、1名が入浴介助に入っている間は、残されたもう1名の職員が残り9名の利用者の介護にあたります。
見守りをするだけなら良いですがそうではありません。
その間に食事介助や口腔ケア、排泄介助や家事といった間接業務を行いながら、立ち歩かれる方が転倒しないように常にアンテナを張って細心の注意を払っておかなければいけないのです。他にも電話対応や面会対応、利用者の方からのナースコール対応なども行います。
ここまで書くと分かって頂けると思いますが、一時的に2名の介護職員がいてもその大半は介護職員1名で対応することになります。したがって、この状況下でその人らしい暮らしを在宅と切れ目なく行う事は到底無理なのです。
その人らしい暮らしとは、字の如く「あなたらしく生活すること」です。
そして、その人らしくという意味は、何も食事・排泄・入浴のあり方(個別ケア)だけを指している訳ではありません。
このように、必要な支援は利用者によって異なり、その人らしさもまた利用者によって十人十色で、それを目指すためにユニットケアという手段が誕生したのです。
しかし現実はどうでしょう。
憧れを抱いて入職したものの単なる幻想ではないか。そう感じた人も多いのではないでしょうか。
≫【ユニットケアを辞めたい】しんどいと感じる3つの理由を徹底解説!
職員配置に見合った介護報酬ではない
先程、私が勤める施設では、「全てのユニットで早出・日勤・遅出が確保され、更に余剰を抱えているため日中多いと1ユニットに4人の介護職員が重なる時間帯もある」と言いました。
介護職にとってはありがたいかもしれませんが、経営的には厳しく、人件費率は70%目前というところまで迫ってきました。これはかなり危機的状況です。
介護職員の人数が多い上に辞める人も少ないので人件費が年々上がるのは当然だと言えますが、介護業界は青天井ではないので人件費を抑えたくても定員と介護報酬によってどうすることもできないのです。
比率を下げるにはとにかく支出(人件費)を減らし収入(稼働率)を増やすしかありませんが、その人らしい生活を目指すためには人件費は決して無駄な支出とは言えません。むしろ、その人らしい生活を送って頂くには介護職員の人件費は必要な支出で、要するに介護報酬が低すぎるという結論に達する訳です。
とはいえ、人件費が経営を圧迫するとギリギリの介護職員で運営せざるを得ない事業所が増えてきますが、そうなると利用者にその人らしい生活を送って頂くのは難しいのです。
容赦なく一方的に課せられる書類の作成業務
国は介護現場の人手不足を知りながら、多くのことを現場に課してきました。しかもそれは増える一方で減ることがないのです。
ひと昔前の人が潤っていた時代よりも、人手が不足している現在の方が圧倒的に業務量が多くなっています。現場を苦しめているのは介護業務に加えて、制度改正のたびに課せられる加算取得に伴う計画書やモニタリング記録等の書類作成業務も大きいのです。
少しでも収入を増やすために加算を取りたいけど、人手不足で勤務中には作成できず躊躇している事業所もあるのではないかと思います。
実際に私が勤める施設でも、加算の要件は満たしているものの、これ以上介護職員へ負担を掛けまいと取得していない加算が複数あります。
業務が増えるということは、一番大切な利用者との関わりの時間を奪うことになります。
制度改正のたびに、国は本当に利用者のその人らしい暮らしを考えているのだろうかと疑問に思います。
仕事を増やすだけではなく減らすことも考えてもらえると、世の中の介護職員の皆さんがどれだけ救われることか。
やることが増え、利用者と関わる時間を失っていき、その人らしい暮らしからどんどん遠ざかっている今の介護施設。利用者がその人らしさを失う要因は、決して介護施設側だけの問題ではなく政策にも要因があると思っています。
ユニットケアの矛盾!破綻するのは業務の多さに問題がある
振り返れば、ユニットケアが誕生した当初の方がユニットケアらしいケアが多くの介護施設で見られていたのではないかと思う。今ほどやらなければいけない事も多くはなく、介護職員たちは伸び伸びとした気持ちで利用者と向き合っていました。
痛ましい事件が起こるたびに、まじめに取り組んでいる事業所や介護職員たちまで犠牲となり、国からも世間からも厳しい目で見られるようになっていきました。
その結果、研修の義務化や書類の嵐。そのしわ寄せはサービスを利用する高齢者にも影響を及ぼし、今やユニットケアは幻想であるかの如く流れ作業に逆戻りしている事業所も増えてきたのです。
当時は、家庭的な雰囲気を演出するためのしつらえ、利用者の方と毎日一緒に作る味噌汁、ご飯を炊き、食卓を囲んで一緒に食事を食べました。
個浴の入り方を学び、自宅と同じように施設でも暮らせる場所を作り上げようと皆で夜な夜な話し合いました。
時間にも余裕があり、散歩や園芸、レクや研修なども難なくこなしていました。
今、どれだけの施設で出来ているでしょうか・・・
良いケアと引き換えに証拠集めと言わんばかりの膨大な書類作成を現場に課す。
苦しめるだけ苦しめ、当初描いていたその人らしい暮らしをどんどん遠ざけている今の制度。
これ以上、仕事を増やさないで。
利用者さんにやってあげたい事が出来ません。
そろそろ普通の感覚で介護現場を見て欲しい。
ユニットケアの目的とやる事が矛盾だらけです。
これは我々介護職員の願いです。
これからどうなってしまうんだろう・・・
過去の悲惨な介護へまた逆戻りするのでしょうか。
であれば、きっと志を高く持った優秀な介護職員たちは現場から離れていくに違いありません。
過去の「機械的な介護業務からその人らしさは生まれなかった」ことを忘れてしまったの?つくづくそう思うのです。
≫【ユニットケアを辞めたい】しんどいと感じる3つの理由を徹底解説!
ユニットケアの復活には介護に魅力が必要!
それでは、ユニットケアを崩壊させないために何をすべきかズバリお答えします。
それは給与アップです。
今の時代、「給料が安くても介護の仕事が好きだからやりたい」という人は少ないのです。
将来の不安があるから尚更のこと、給料に魅力を感じる仕事をしたいと思うのは当然です。
野球選手になりたいと思うのは高収入が得られるという夢があるからであって、プロ野球選手が介護職員並みの給料なら誰もその夢を掴みに行こうなんて思わないのです。
介護の仕事に魅力を感じてもらうには、まず給与を全産業の平均まで持っていくことは最低ラインで、あとは個人の能力次第で400万→500万→600万→700万→800万と稼げる仕組みを制度として築いて行く事が大切だと思います。
こうすることで、介護職員の雇用が促進されるはずです。
給料を増やさないケチな事業所からは介護職員の離職が進み、給料の良いところだけが生き残る。そして人が潤えば手厚い介護ができ、事業も拡大していけ、介護に困っている人も救われる。
プロ野球選手と同じで、介護の仕事にも「魅力」や「夢」がなければ人は集まりません。
月額9000円なんて言うちっぽけな物ではなく、「介護職員が全産業の平均給与を上回り年収○○○万円!」みたいなニュースが流れると、異業種から介護職へ転職しようという人もかなり増えるのではないでしょうか。
ユニット型特養が崩壊寸前と言われる理由【まとめ】
いかがでしたか?
こちらの記事では「ユニットケアが崩壊する理由」についてまとめてみました。
どんな仕事にも言えることですが、仕事には働きたいと思える魅力が必要で、その一つがお給料です。
しかし、介護職員の給料は世間的に見てもまだまだ十分な金額とは言えません。
これまでのように世間から給料が安いと思われている間は人手不足は解消されず、こらからも介護職の苦労がなくなる事はないでしょう。
介護職の人口を増やすには異業種からの流入が必要です。
そして異業種からの流入を増やすためには介護の仕事に就きたいと思える動機が必要です。
それが“給料アップ”です。
魅力のある仕事には人が集まり、遠ざかっていくその人らしい暮らしを再び取り戻してくれるはずです。
日々奮闘している介護職員のために今こそ介護の魅力づくりが必要なのではないでしょうか。